Alpine Beer Company / アルパイン ビール カンパニー

創業:1999年

拠点:カリフォルニア州 アルパイン

カリフォルニア州サンディエゴにアルパイン(Alpine)という土地がある。

ダウンタウンから車で30分ほど内陸に入ったこのエリアは、カヤマカ山脈の麓に佇むのどかな場所だ。

アルパイン東部はクリーブランド国立森林公園にも近く、森林や乾燥地帯などサンディエゴの豊かな自然へと踏み込むゲートウェイとして知られている。

そして、このエリアの大通りのそばに佇んでいるのがアルパイン ビールカンパニーだ。


1999年にエールスミス ブリューイングの契約醸造という形でビール造りを開始し、2002年より現在の住所にブリュワリーを構えている。

自らを"The Home of Pure Hoppiness"と謳っている通り、ホップの味わいが前面に出たビールを幾つも生み出しており、いずれもアメリカ国内で高い評価を受けている。

その人気は地元に留まらずアメリカ国内の多くのホップヘッズが追い求めるブリュワリーだ。

創業者はパット・マキルヘニー(Pat McIlhenney)。

アルパインの歴史は彼の熱意と行動によって形作られてきたといっても過言ではない。

もともとビール業界に飛び込む前は、そして飛び込んでから少しの間も、パットは消防士として30年以上働いていた。

そんな彼がビールに関わるようになったのはホームブリューイングがきっかけであった。

それまではビールにまったく興味が湧かず、なぜ人々はわざわざこんなものを飲むのだろうかと考えていたのだが、ヨーロッパ産の輸入ビールに出会って考えが変わったという。

それまで経験したことが無いような衝撃的な味わいにすっかり虜になってしまったのである。

しかし輸入ビールの流通量は限られているため、なかなか手に入らないのが問題だった。

そのもどかしさの解決策として「自らビールを醸造すればいい」という事実に辿り着き、1983年にホームブリューイングを開始した。

当初は自分のお腹を膨らませるためだけの趣味だったが、当時カリフォルニア州に少しずつ誕生していったブリューパブの存在が、彼に「ビジネスとしてのビール造り」という考えを芽生えさせた。

「極々少数ではあったが、カリフォルニア州に誕生したいくつかのブリューパブを訪ねるのは楽しかったよ」とPatは述べる。

「その中でも先駆者の1つがHoplandにあるメンダシーノ ブリューイングだった。消防士として北カリフォルニアに駐在していたから度々訪ねることができたんだ。それを機会に、ビールの醸造を実際にビジネスとして成立させることが出来るということを学んだよ。」


そして彼はビール造りに真剣に向き合うようになった。

ビール造りに関する詳細なメモを残し、ホームブリューイングコンペティションに何度も出品した。

審査員たちの批評を真摯に受け止め、いつかオープンすることになるであろう自分のブリュワリーのラインナップを徐々に作り上げていったのである。

しかしながらレシピ作りと実際にブリュワリーを運営するのは別物だ。

そのためパットは後者の経験を、エールスミスでの醸造アシスタントのボランティアにより培った。

「実際に自分の手でやってみたり仕組みを見たりしないと分からないことがある。単純なことではあるが、タンクのクリーニング、クリーニング剤の混ぜ方、微生物の侵入を最小限に抑えるホースの繋ぎ方など、根本的な運営から学んでいったのさ」と彼は言う。

そうした長きに渡る苦労の末、1999年11月、お世話になったエールスミスの醸造設備によってアルパインのビールは世に出まわり始めたのである。

最初のビールは13の異なるモルトを使用した"McIlhenney's Irish Red"だった。

1986年に初めてレシピを考案して以来、10年以上改良を重ね続けたレッドエールである。

その1年後には、現在のアルパインの中でも最も名高いビールであるダブルIPA"Pure Hoppiness"も造られるようになった。


エールスミスの醸造設備で造られたアルパインのビールはパットの予想を上回る人気で、造るそばから売り切れるほどであった。

そのことに手応えを感じて、またエールスミスまでの長い通勤時間に耐えかねて、2002年にパットの地元アルパインに小さなブリュワリーをオープンした。

その品質の高いビールはビールファンの間で瞬く間に知られるところとなり、2006年にはBeerAdvocate誌が選ぶベストブリュワリーの第5位にランクイン。

その人気は留まるところを知らず、生産が間に合わない事態が度々発生した。

2008年後半には施設の拡張を始めて、2009年半ばに以前の倍の大きさのファーメンター4機を、ブリュワリー裏の古いガレージに設置。

その後2010年初めにはブリュワリーと同じ建物に38席のパブをオープン。

常時8~10タップのドラフトビールを提供し、パイントサイズはもちろんテイスティングセットも用意されている。

さらにグラウラーフィルによる持ち帰りも可能で、地元の人々に愛されるパブとなった。

2015年6月には180席にまで拡張されリニューアルオープン。

ますます多くの人が訪れる人気スポットとなったのである。

これだけの人気を誇り、かつ生産量も決して大きいとは言い難い彼らのビールがなぜ日本に輸入されることとなったのか。

それには、同じくサンディエゴで大きな存在感を放つグリーンフラッシュ ブリューイングが関係している。

2013年11月、アルパインのビールの一部はグリーンフラッシュの設備で醸造されるようになり、もともと1,500バレルだったアルパインの生産量は3,000バレルに倍増した。

そして翌2014年11月、アルパインは正式にグリーンフラッシュの傘下となった。

「グリーンフラッシュと共に働くようになってからというものの、彼らの繊細でありながらおおらかな仕事ぶりを信頼し尊敬するようになった」とパットは述べ、グリーンフラッシュ共同創業者のマイク・ヒンクリー(Mike Hinkley)も「アルパインのビールを醸造できることに興奮している」と語っている。

"Handshake agreement"と彼らが呼ぶ通り、知識や経験を分け与えるためにグリーンフラッシュとアルパインは友好的にパートナーシップを結んだのである。

これにより以前までサンディエゴに行かなければ手に入れることができなかったアルパインのビールは、アメリカ国内50州、そしてここ日本にまで流通することが可能となった。

量と引き換えに品質を損なっているかもしれない、と考える人もいるだろう。しかし心配はいらない。

グリーンフラッシュで醸造する際にもパットと息子でヘッドブリュワーのショーンが監督して2人の知識と経験を共有することで、地元で醸造されているオリジナルと限りなく同じ品質で生産されている。

2015年11月にアメリカ50州で販売を開始したPure Hoppinessを醸造する際も、この傑作ダブルIPAのユニークな醸造過程に細心の注意を払っており、でき上がったビールを「いたるところでホップヘッズに楽しんでもらえることを楽しみにしている」とパットは述べる。


"The Home of Pure Hoppiness"は強力なパートナーを得て、今後さらなる飛躍を遂げるだろう。

タップルーム

Outpost (カリフォルニア州 アルパイン)